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無能でも、月給は「非正規」の1.5倍超もらう「正社員」の絶対条件

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■正規と非正規の月給は10万円以上の差

 非正規社員比率が40%に上昇する中、正社員と非正規正社員の賃金格差が依然として大きいことが厚生労働省の2015年の調査(賃金構造基本統計調査)でわかった。

 正社員の平均月給は32万1100円なのに対し、非正規社員は20万5100円。仮にデキがあまりよろしくない正社員であっても非正規の1.5倍超もらえるということになる。

 これは残業代を除く同じフルタイム勤務者の比較だ。正社員を100とすると、非正規の月給は63.9と6割ちょっとになる。前年より0.9ポイント上がっているが、それでも格差は大きい。

 また、この格差は商社など大企業内では56.9となっており、非正規は正社員の月給の半分ちょっとしかもらっていない。業種別では、卸売業、小売業の非正規が58.9と正社員との格差が大きい。

 月給で10万円以上の差が開くだけではない。

 これには賞与が含まれていないが、会社によっては非正規に寸志程度の賞与か、まったく支給しないところもある。大企業の正社員だと月給の4~5カ月支給するので、まったく出ない非正規とは年収ベースではさらに格差が拡大することになる。

 では、なぜ正社員と非正規でこんなにも格差が生まれるのか。

 大きな原因のひとつは正社員と非正規の「働かせ方・働き方」の違いである。じつは日本の正社員は世界でも希な特殊な働き方をしている。一般的に「日本的雇用慣行」と呼ばれているものだ。

 ご存じのように、日本ではスキルも何もない職業未経験の学生を正社員として新卒採用し、研修や職場での訓練を通じて育て上げていく。2~3年おきに会社のいくつかの部署の仕事を経験し、10年も経つと、ある職務に関しては決して一人前とは言えないが、大体のことがわかる「何でも屋」に育っていく。

 会社としては教育投資などのコストがかかるが、その代わりに社員にいろいろな仕事をしてもらい、長く働いてもらうことでコストを回収できる。逆にいえば、途中で社員が辞めてしまうと大きな損失になる。

 何でも屋であるから人事異動は頻繁に発生し、転勤もあれば、子会社への出向など配置転換して別の業務を担当させるなど使い勝手も良い。会社にとっては極めて合理的な選択といえる。

 また、社員の側も「雇用を保障しますし、年齢とともに給与も上げますし、ボーナスも退職金も出しますから長く働いてください」と言われると、この会社でがんばろうかという気になる。

■残業、長時間労働は当たり前

 こうした日本的雇用慣行のメリットは他にもある。たとえば会社は業績が良いときは、社員たちに残業で長時間働いてもらえる。新たに人を雇い入れるよりは時間外割増賃金を払って残業してもらったほうが得なのだ。

 逆に業績が悪化すると、社員のクビは切れない代わりに残業を減らし、それでも足りないときはさらにボーナスを削って人件費を調整しようとする。残業が好・不況期のバッファー(緩衝)になっているのだ。

 非正規の1.5倍超の月給をもらう代わり、日本の正社員の労働時間は長い。残業はやって当然という構造的要因がポイントになっている。

 こうした働き方は同じ正社員でも欧米企業とは異なる。

 欧米では一定の職務スキルがないと新卒でも採用されないし、入社後も担当する職務で賃金が決まり、スキルがアップすればそれに応じて賃金も上がる。また一部のエリートでない限り、転勤もなければ長時間残業もない。対して日本の正社員は職務や時間に関係なく無制限に働くことを求められる。

 では、非正規社員の働き方はどうなっているのか。

 非正規社員の働き方は基本的に営業事務や経理業務の一部といったルーチンワークが多い。限られた職務の遂行だけが求められ、何でも屋の正社員の補助的な仕事が中心だ。

 月給は時給ベースであり、技能レベルによって多少の賃金は上がるが、正社員に比べるとそれでも低い。

 最近、非正規であっても正社員と同じようにいろんな職務をやらされ、場合によっては出張・転勤もこなしているのに月給が同世代の正社員より低いケースは少なくないが、これは労働契約法の「合理的理由のない差別」にあたり違法となる可能性が高い。

 整理すれば、非正規の働き方は一定の時間内に特定の職務を遂行する欧米企業の職務主義に近く、正社員は何でも無制限の特殊な働き方。そんな二重構造になっているといえる。

 安倍首相は「1億総活躍社会」の実現に向け「同一労働同一賃金」の仕組みを導入すると発言している。しかし、前述したようにそもそも正社員と非正規の働き方が異なる中で、何をもって同一と判断するのか、どういう仕事をした場合にどういう賃金になるのか、どこまでの差が許容されるのかといった基準を設定するのは容易ではない。

 だが、一方では正社員の世界も、雇用を保障する代わりに無制限に働いてもらう「日本的雇用慣行」が徐々に崩れ始めている。リストラの実施で終身雇用をかなぐり捨てているにもかかわらず、配置転換と長時間労働を強いる無制限な働き方だけが維持されているといういびつな構造になっている企業も多い。

 また、正社員といっても前述したように、どんな仕事でも何でもそつなくこなす社員ばかりではない。能力不足のために責任ある仕事を任されない、あるいは給与分の貢献度をしていないのに高い給与をもらっている社員も少なくない。

■「非正規の報酬は低い」を証明する調査

 大手流通業では正社員と非正規の処遇の違いの基準を「転居を伴う転勤の有無」にしているところも多いが、会社によっては非正規と同じ業務に従事しながら、ほとんど転勤したこともない社員もいる。合理的な理由とは言えない基準を放置したまま、正社員との処遇格差をつけている企業も少なくない。

 本来の同一労働同一賃金は転勤の有無などは関係ないはずだ。職務内容や職責の違いによる一定の給与差があるのは当然としても、その差が本当に正しく、合理的なのかを追求するべきだろう。

 正社員と非正規の月給格差が合理的であるかどうかを調べるために、仕事の価値(職務価値)を比較する方法がある。実際にその方法で調査したところ、合理的とはいえない格差も見つかっている。

 全国生協労働組合連合会(生協労連)は08年に大学の研究者の協力を得て、米国流の職務分析の手法を使って生協店舗の正社員と非正規について職務内容を分析し、仕事の価値と賃金格差の実態を調査している。

 具体的には、正社員、管理職パート、一般パートの3者を対象に、店舗の仕事を洗い出し、職務ごとに知識・技能、職責の重さ、仕事でもたらされる負担など4つの指標で評価し、点数化を試みた。

 その結果、正社員が最も高い点数になったが、正社員の点数を100とした場合、管理職のパート92.5、一般のパート77.6という結果が出た。

 正社員のボーナスを加えた時給賃金は2153円。これを基準に先の比率で計算すると管理職のパート1991円、一般パート1671円になった。つまり、職務価値に照らせば、この時給が合理的な金額ということになる。

 しかし、実際にもらっている時給は、管理職パートは1377円、一般のパート1024円だった。管理職パートは合理的金額より614円、一般のパートは647円も低かったのである。

 同一労働同一賃金の視点に立てば、パートの時給を600円以上引き上げる必要があるということだ。

 職務・職責を考慮してもこれだけの格差があるのである。

 EUでは正社員と非正社員について、客観的に正当化されない限り、不利益な取扱いを禁止する均等待遇原則を法制化している。EUであれば、違法となり是正を求められるかもしれない。現在、安倍政権はEUと同じような法制化を検討しているが、注視していく必要がある。

 特殊な働き方の日本で断言できるのは、非正規社員が全労働者の4割に達している現在、ただ単に「自分は正社員だから」「難関の就職試験をクリアしたから」といった理由で高い月給をもらうことは許されなくなるということではないだろうか。

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